アーミッシュの生活を語る前に少し、アーミッシュの起源と歴史を簡単にまとめてみよう。
アーミッシュの起源は16世紀、宗教改革運動の活発であったヨーロッパにおいて、キリスト教の幼児期の洗礼を無意義とし、成人後の本人の意思に基づく「再洗礼」の重要さを主張した再洗礼派(Anabaptist)のグループに始まる。当初、この再洗礼派を主張した人々の多くが「異端者」として死刑にされたため、それを免れるように再洗礼派の人々は次々とスイスとドイツの国境近くの山奥に逃げ移った。異端者とされた彼らは、厚い信仰心を持ちつつも教会に出向くことが許されず、仕方無しに自分たちの家を教会代わりに、毎週の集まりを開いたという。この伝統が、アーミッシュの生活に今も根付くものとなる。
そして1536年に、メノー・シモンズというオランダの若いカソリック司祭がこの「再洗礼派」に加わる。彼のリーダーシップと著書は「再洗礼派」の結束を更に強め、この頃から、「再洗礼派」たちは彼の名をとって「メノー派(Mennonite)」と呼ばれるようになる。
メノー派は、その特徴を大まかに、1)成人後(大抵16歳以降)の自発的な選択による洗礼、2)国家・政府の支配からの独立(兵役への拒否を含む)、3)教会ではなく自宅での礼拝(自治教会)とする。
1693年に、このメノー派から、スイスの司教ジェイコブ・アマンが「我々メノー派にはもっと全体的な規律・戒律が必要だ」として、分派となる「アマン派(Amish)」の思想を立ち上げる。彼の主張した規律のうちには、洗礼を受けた人でも行いによっては破門される制度の制定や、スイスのメノー派では実践されていなかった伝統の洗足の儀式の再導入や、聖餐式の増加などが含まれている。しかし、それらの慣習的な違いをのぞけば、メノー派もアマン派も、キリスト教の原則的な聖書の教えを、彼らなりの解釈で忠実に守ることを第一に掲げていることでは共通している。
ヨーロッパでは、旧教勢力はもちろん、新教勢力からも迫害を受け、多数の人が処刑され、衰退していったこのメノー派/アマン派のグループだが、18世紀にヨーロッパ人のアメリカへの移住が始まった時、現ペンシルベニア州の領主であった
ウィリアム・ペンの庇護の下、大量にアメリカ大陸東海岸に移住する。ウィリアム・ペン氏は信仰に厚くそれでいておおらかな精神を持った思想家でもあり、「聖なる試み(Holy experiment)」と題した、「敬虔で道徳的で、人間性の手本となるような社会」を新大陸で実現させようとした都市計画家でもあった。現代の都市社会学で称される「ユートピア理論」の先駆者である。その実験の一環として、彼はメノー派/アマン派の庇護にも力を入れたのだ。
そして、異端児としての死刑の恐怖からも免れ、アメリカで本格的に信仰を謳歌し始めたアーミッシュの人々は、その後、劇的に変貌を遂げたアメリカ社会の中でも、その伝統的な簡素で信仰第一な生活の姿勢を崩すことなく、異彩な輝きを放って存在しつづけている。
*今現在、アメリカの22州とカナダのオンタリオににアーミッシュの村が確認されており、1995年の調べではおよそ134,000人(洗礼を受けた成人のみを含む調べ)のアーミッシュが北米に住んでいて、今尚その人口は徐々に拡大中だという。
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さ、歴史的なアーミッシュのお勉強は済みましたね。次回は、その生活の神秘にせまります。お楽しみに!ってなんか「世界ふしぎ発見!」口調ですが、気にしない方向で(笑)
参照サイト:
ウィキペディア検索「アーミッシュ」(日本語版)
Armish.net
Religious Tolerence.org: The Amish
The Amish and The Plain People