長いこと海外で暮らしてると段々味覚が変わっていくというが、私みたいにまだ2年しか離れていなく、更に自炊で限りなく日本食に近いご飯をいつも食べているものにはまだ日本の味覚というのがしつこく記憶に残っていて、それ故に度々経験するショックがある。それは、海外で販売されている「日本の食品」の不味さだ。
よく聞くのは、アメリカ版日清カップヌードルの不味さ。毎年、タイムズスクエアのカウントダウンの中継で、ばばんと大きく巨大カップヌードルの広告が目に入ってくるようにアメリカでも日清のカップヌードルというのは国民的なレベルで生活に浸透しており、庶民のおやつ、または「何もないけど腹減った」時の心強い非常食的役割を占めている。
でも、ノンノン、その慣れ親しんだ見かけに騙されてはいけません。ブランドは一緒でも発売される国が違うと、その国のマーケットに合わせた味の改良がなされるのです。「改良」としたのは間違いではありません。だってその国の国民の下にあった味に調整されるのだから、この場合アメリカ人にとっては「改良」。しかし、本家本元の生産国である私たち日本の人間からすれば、どこをどうとっても「味覚の貧相なアメリカ人たちのためになわざわざ味の質を下げた」としか思えません。
不味いんです。
あげてる油の質が悪いのか、良く水を吸わず、いくら時間を置いてもごわごわしたままのゴムのような麺に、出汁のパンチが効いてないからなのかやけに水っぽいスープ、ふわふわの卵や小さいけど見つけるとちょっと得した気分になるエビや、なんかいっぱい食べると体に悪そうな四角い肉などの具は勿論ドコにも見当たらず、これじゃマクドナルドのポテトの方がよっぽど食事っぽいかもしれない、と段々最後の方は空しくなってくること請け合いの、言うなれば、ジャンクの中のジャンクの味がします。
日本だって、別に日清のカップヌードルがご馳走ってわけじゃないけどさ、こんなに不味くはなかっただろう。一度食べてショックを受けてから(というか期待を裏切られてから)、どんなにお腹が空いて3個で一ドルなどのそれがスーパーの棚に並んでいても絶対に買いません。金に困ってても、多分なんか別のものを買うよ。だって、あれ食べ物じゃない(断言)。
中華街などにいくと、日清ではなく今度は出前一丁などの中国版が同じような値段で売っていて、そちらも試してみたが、アメリカ版よりはマシとはいえ、やっぱり日本の味は望めないことがわかった。中国の出前一丁は「トムヤムクン風味」とか「鍋焼きうどん」とかの亜種があってそれはそれで楽しいけどね。ただ、難点は、たまにスープの袋が入ってなかったりするという致命的な欠陥品の存在か。あれは味付けはお好みで、ってことか。いや、やっぱ違うだろう。
じゃあ、日本食が恋しくなったら日系のスーパーに行くしかないってわけね。めんどくさいとか高いとか言わないで、行きますよハイハイ、と思っていたら、そこにも思わぬ落とし穴が…
ラーメンにも飽きてきてサッポロ一番のソース焼きそばを買ったら、これがとんでもなく不味いのだ。一口食べて、食べ物は大切にしましょうと言って躾けられた私がさっさと残りを捨ててしまったほどだ。すごい!これは日清のカップラーメン(アメリカ版)以上の不味さだ!!麺とソースが分離してなんか酸っぱいよお母さん!
くやしくなって先ほど屑篭に捨てたパッケージをまじまじ見てみると、「ソース焼きそば」のロゴの周りは「SAPPORO ICHIBAN」「JAPANESE STYLE NOODLE」「CHOWMEIN」などの横文字だらけ。日系スーパーに堂々と並べられてたから気付かなかったけどこれアメリカンプロダクツか~(「なんだ、このプラダのポーチMADE IN CHINAか~」と同じ類の軽視の響きをこめて)
やられた。もう日系スーパーも信じない。買いだめした残りのソース焼きそばをどうしてくれよう。多分、これあれだ、麺がやけにぶっといから、サッポロ一番のラーメンの使いまわしでソースとパッケージだけ変えてあるんだ。だから麺に味が沁み込まないんだ。と分析してみるも空しく、またしても期待を裏切られた心とお腹を慰めるべく、実家から送ってもらったうどんを茹でております。
海外に暮らしてる人にとってはちょっとした軽食でも、日本の食べ物は、時に心の支えやたまの楽しみとしてとっておいてあったりするんだから、裏切りは想像以上にこたえる。あーあ、それにしても安い製品についてなんだかいっぱい語っちゃったよ(笑)